こんにちは。薬剤師のあきゆいです。
「ステロイドは使いたくないんです。」
小児科で働いていると、多くのお母さんからこの言葉をよく聞きます。
実際、赤ちゃんがアトピーや乳児湿疹で病院にかかると、主治医から「塗り薬出しておきますね」と言われて『ステロイド外用剤(塗り薬)』が出されたという経験ありますよね。そんなとき、『ステロイドの副作用が怖くて』塗らずにそのまま放置していませんか?
お母さんたちがステロイド外用剤を怖がる理由として、「使い出すとやめられなくなる」、「皮膚が厚くなる・黒くなる」、「だんだん強いステロイドを使わないといけない」、「体に蓄積して骨がぼろぼろになる」、「成長に支障がでる」などがあげられますね。
でも、ちょっと待って! ステロイド外用剤の副作用に関するその知識って、本当に正しいのでしょうか?
この記事では、ステロイド外用剤の副作用に関する正しい知識や、ステロイド外用剤の効果と使い方についてまとめました。
- 目次 -
1.ステロイド外用剤の副作用
まずはじめに、ステロイド外用剤でおきる『本当の』副作用と、間違って広まった『ウソの』副作用について解説します。
1-1.ステロイド外用剤でおきる『本当の』副作用

ステロイド外用剤(塗り薬)による副作用のリスクは、ステロイドの飲み薬と比較して、とても少ないんです。
なぜなら、ステロイド外用剤は皮膚にだけ効果を発揮し、全身へのステロイドの影響をなるべく少なくしている薬だからです。
ステロイド外用剤でまれにおきる可能性がある『本当の』副作用は、大きく分けると4つあります。
【 ステロイド外用剤でおきる可能性がある副作用 】
- 皮膚が薄くなって傷つきやすくなる(皮膚萎縮)
- 細菌・ウイルスに感染しやすくなる(皮膚の易感染性)
- ニキビ、毛深くなる(毛包皮脂腺の活性化)
- 血管がひらいて皮膚が赤くなる、いわゆる「赤ら顔」(毛細血管拡張)
ほとんどが、皮膚だけにおこる副作用ですね。
万が一副作用がおこっても、ステロイド外用剤を中止したら元に戻るので、必要以上に心配する必要はありません。それに、日ごろから皮膚の状態をチェックして異常があれば、早めに主治医に相談することで副作用がひどくなるのを防ぐことができます。
では、副作用がおきる頻度ってどのくらいなのでしょうか?
最も強いランクのステロイド外用剤『デルモベート軟膏』の添付文書(薬の説明書)に書かれている副作用を調べてみました。
副作用等発現状況の概要
軟膏では、総症例8776例中、262例(3.0%)、クリームでは、総症例7251例中、220例(3.0%)に副作用が報告された。その主なものは、皮膚萎縮〔軟膏91例(1.0%)、クリーム54例(0.7%)〕、毛のう炎・せつ〔軟膏57例(0.6%)、クリーム30例(0.4%)〕、毛細血管拡張〔軟膏42例(0.5%)、クリーム40例(0.6%)〕であった(使用成績の調査結果)。
(引用:デルモベート軟膏添付文書)
最も強いランクのステロイド外用剤ですら、一番多い副作用『皮膚萎縮(皮膚が薄くなって傷つきやすくなる)』の頻度は、1.0%(100人に1人)です。これを見ると、ステロイド外用剤でおきる副作用の確率って、かなり少ないことがわかりますよね。もちろん、ステロイド外用剤の副作用はゼロではありません。しかし、常識的な範囲で使う場合、問題となる副作用はほとんどおきないんです。
それでも、ステロイド外用剤は『怖い薬』でしょうか? むしろ、ステロイド外用剤は、飲み薬より格段に安全な薬と言えると思います。
1-2.ステロイド外用剤でよく聞く『ウソの』副作用

ステロイド外用剤でまことしやかに噂されている『ウソの』副作用について解説します。
ウソ ① 使いだすとやめられなくなる
ステロイド外用剤はしっかり使って、皮膚の炎症が治まればやめることができます。
「ステロイドを使いだしたらやめられなくなった」と言っている人は、よほどの重症か、『自己判断で勝手にステロイド外用剤をやめてしまい症状が悪化 → 再度ステロイド外用剤を使う』ことを繰り返している可能性があります。
ウソ ② 皮膚が黒くなる
ステロイド外用剤を使っても、皮膚は黒くなりません。逆に白くなることはあります。
ステロイド外用剤を使って皮膚が黒くなったように感じるのは、治療の間に皮膚の赤みが治まって皮膚の奥の硬く変化した部分(色素沈着していることも)がよく見えるようになったためと考えられています。ステロイド外用剤が皮膚を黒くしている訳ではありません。
また、皮膚が白くなるといっても、皮膚の色が抜けるわけではないのでご安心を。ステロイドには血管を収縮させる作用があるので、皮膚の血管がぎゅっと細くなった結果、血管が目立たなくなって白く見えてしまうことがあるんです。
ウソ ③ 皮膚が厚くなる、薄くなる
ステロイド外用剤を使っても、皮膚は厚くなりません。
ステロイドの副作用で皮膚が薄くなることはあっても、厚くなることはありません。「ステロイドで皮膚が厚くなった」と言っている人は、治療が中途半端でアトピーなどの炎症自体が悪化した結果、皮膚が厚くなってしまったと考えられます。
ウソ ④ だんだん強いステロイドを使う必要がある
基本的に、ステロイド外用剤の強さを上げていく必要はありません。
ステロイド外用剤の治療がしっかりできていれば、徐々に弱いステロイドで治療できたり、やめることができるようになります。だんだん強いステロイドを使うことになってしまった人は、ステロイド外用剤の使い方が中途半端であったり、病気の勢いが強かったりする場合です。
「ステロイド外用剤を続けると、だんだん効果がおちるのでは?」と思われる方もいるかもしれませが、そんなこともありません。使い続けることで効果が落ちるのであれば、『ステロイド外用剤で皮膚が薄くなる』ような副作用も出ないはずです。
ウソ ⑤ 体に蓄積して骨がもろくなる、成長に支障が出る
ステロイド外用剤を数週間使用する程度では、全身にステロイドの影響がでることはありません。
確かに、ステロイドを長い間使用すると、骨をもろくしたり、コルチゾールというホルモンの分泌を抑える作用がでることがあります。しかし、これはステロイドの飲み薬でおきる副作用で、ステロイド外用剤のように皮膚に塗るだけでは通常おきることはありません。
ただし、半年~数年以上塗り続けた場合は、長い時間をかけて皮膚から少しずつステロイドが吸収された結果、全身性の副作用がでてしまうことが知られています。
実は、ステロイド外用剤の中途半端な使い方が原因
まことしやかに噂されている『ウソの』副作用の中で、信じていたものがありましたか?
「ステロイド外用薬(塗り薬)の副作用だ!」って言われているものは、実際にはステロイド外用剤を中途半端に使ったために、病気自体が悪化したことによる症状がほとんどです。または、ステロイドの飲み薬でおきる副作用が、ステロイド外用剤でもおきると勘違いされている可能性があります。
ステロイド外用剤を半年~数年塗り続けるような使い方をしている場合では、全身に副作用が出ることがあるので、治療上必要のないステロイド外用剤を塗り続けるようなことをしてはいけません。
2.ステロイド外用剤の効果とは
ステロイドは副作用ばかりに目が行きがちですが、ステロイド外用剤が処方される理由を知っていますか?
2-1.ステロイドは炎症止め

ステロイド外用剤を使う理由を一言でいうと、『皮膚の炎症を止める』ためです。
アトピー性皮膚炎では、皮膚に炎症がおこり、赤く腫れたり、かゆみが出たりします。この炎症を放っておくと、かゆくて皮膚を掻きむしってしまい、皮膚の炎症はさらにひどくなりますよね。言わば、アトピー性皮膚炎とは皮膚に炎症という火種があり、それが燃え盛ってしまう状態です。
ステロイド外用剤は、「炎症をこれ以上燃え広がらせないための、火消しの役目」を担っているんです。これは、保湿剤などの他の軟膏ではできないことなんです。
2-2.ステロイド外用剤に保湿効果は期待できない

ステロイド外用剤だけ塗っていても、保湿効果はさほど期待できません。保湿をする場合は、保湿剤を合わせて使いましょう。
あくまで、ステロイド外用剤は『炎症を抑えるために使う薬』です。皮膚の炎症がある時、医師に指示された期間だけ使いましょう。保湿剤と同じ感覚でダラダラ塗り続けると、副作用のリスクが上がるだけです。
3.ステロイド外用剤の副作用を予防して、効果を最大限に発揮させる方法
ステロイド外用剤も、ただ使えば良いという訳ではありません。実は、使い方によって副作用や効果に大きな違いがあるんです。
ステロイド外用剤の副作用を予防して、効果を最大限に発揮させる方法をご紹介します。
3-1.ステロイド外用剤は怖がらずにたっぷり使う

ステロイド外用剤の使い方で重要なのは、たっぷり塗って、肌がきれいになるまで続けることです。
なぜ、 “たっぷり“ 塗る必要があるかと言うと、炎症をおこしている部分をしっかりとステロイドで覆うためです。

ステロイド外用剤の塗り方は、皮疹(皮膚が盛り上がって赤い部分)に軟膏を乗せてから伸ばせばOKです。このとき、強くこすらないように気をつけましょう。
よくある間違いとして、ステロイドに対する恐怖心のためか、ステロイド外用剤を薄く伸ばしてすり込むように塗る人がいます。しかし、薄くすり込んだからといって、副作用の頻度は減りません。逆に、薄く塗りすぎると炎症部分に薬がのらないので、ステロイドの効果が出ないこともあります。

つまり、少ない量のステロイド外用剤を続けることで、結果として皮膚の炎症が慢性化し、ステロイドを使う期間が長くなります。すると、トータルで使うステロイドの量が多くなり、副作用がでやすくなってしまいます。
ステロイドの副作用が怖くてたっぷり塗らずにいると、副作用のリスクが上がってしまうなんて、それこそ本末転倒ですよね。だから、ステロイド外用剤はたっぷり使う必要があるんです。
ちなみに、ステロイド外用剤は顔に塗ることもよくありますが、多少舐めてしまっても大丈夫です。舐めてもステロイド外用剤の効果や副作用が全身に出ることはないので、しっかり使いましょう。
参考記事 赤ちゃんがステロイド軟膏を舐めちゃった!どう対処したらいい?
3-2.ステロイド外用剤を塗る量の目安は?

「ステロイド外用剤をたっぷり使うことはわかったけど、塗る量の目安はどれくらい?」という質問もよく受けます。
塗る量の目安としてよく使われるのが、『FTU(エフティーユー <finger tip unit;フィンガーティップユニット の略>)』です。
FTUとは、人差し指の先端から第1関節部までチューブから押し出した量のことで、1FTUは約0.5gです。ローションの場合は、1円玉の大きさが1FTUになります。
1FTUは、成人の手のひら2枚分の面積に塗る量に相当し、1本5gのステロイド外用剤だったら、1本あたり手のひら20枚分です。
・・・う~ん、使い方がちょっとイメージしづらいですね。
もう少し具体的に考えてみましょう。
例えば、お子さんの皮膚症状が手のひら4枚分の広さだったら、ステロイド外用剤を1日1回塗る場合、1回あたり2FTU(軟膏1g分)だけ塗ることになりますね。ステロイド外用剤をしっかり使う目安として、5日間で1本(1本5gの場合)使い切れていればOKです。
しっかり使っていくと、ステロイド外用剤を塗り始めて3~4日で赤みやかゆみが治まってくるはずです。
3-3.ステロイド外用剤はいつまで使う?

繰り返しますが、ステロイド外用剤の使い方で重要なのは、たっぷり塗って、肌がきれいになるまで使い続けることです。たっぷり塗る必要性については先ほど解説しましたね。次に、肌がきれいになるまで使い続ける必要性について解説します。
『肌がきれいになるまで』とは、『皮膚の赤み・硬い部分がきれいに無くなるまで』のことを言います。
なぜ、『肌がきれいになるまで使い続ける』必要があるかというと、ステロイドによって炎症が落ち着いて見た目には治ったように見えても、皮膚の中にはまだ炎症の火種が残っているため、再び炎症を起こしやすい状態にあるからです。

炎症をぶり返さないためには、皮膚の赤み・硬さが無くなるまで、しっかりステロイド外用剤を続ける必要があります。
ステロイド外用剤を使ってもアトピーをぶり返してしまう人は、『肌がきれいになるまで使い続ける』ことができていない場合が多いんです。自己判断でステロイド外用剤を中断しないように気をつけましょう。
3-4.ステロイド外用剤と保湿剤を併用する

皮膚がガサガサして、かゆみや赤みがある状態は、皮膚が乾燥してバリア機能も落ちているので、ステロイド外用剤で治療することにくわえて皮膚の保湿がとても重要になってきます。
ただし、ステロイド外用剤だけでは保湿効果が期待できないので、保湿剤をあわせて使いましょう。
ちなみに、よく使われる保湿剤は、白色ワセリン(商品名:プロペト)やヘパリン類似物質(商品名:ヒルドイド)などがありますね。
選び方として、保湿剤を塗る面積や皮膚の状態に合わせて、塗り薬のタイプ(軟膏、ローションなど塗り広げやすさに違いがある)を使い分ける方法があります。狭い範囲に塗るのであれば『軟膏タイプ』、広い範囲であれば『ローション、泡スプレーのタイプ』が使いやすくておすすめです。
3-5.ステロイド外用剤と保湿剤を塗る順番

ステロイド外用剤と保湿剤、どちらを先に塗ったほうが良いのか迷いますよね。かゆみが強い時のおすすめは、①のステロイド外用剤→保湿剤の順に塗る方法です。
① ステロイド外用剤 → 保湿剤の順 (かゆみや炎症がひどいとき)
皮膚の炎症がひどい場合は、ステロイド外用剤を先に塗ってから保湿剤を塗る方法がおすすめです。
なぜなら、先にステロイド軟膏を塗ることで、効果的に炎症部分に薬を届けることができるからです。それに、アトピー性皮膚炎では、目に見えない部分にも炎症がおきている場合があり、ステロイド外用剤を塗り広がることで目に見えない部分の炎症にも効果があると考えられます。
- 目に見えない炎症部分の例(赤い点線で囲った部分)
ステロイド外用剤の効果を重視する医師は、ステロイドを先に塗るように説明することが多いようです。
皮膚科医の指示
ステロイド外用剤と保湿剤を併用する場合の塗布順序について皮膚科医にアンケート調査をした結果1)では、図に示すように、ステロイド外用剤を先に塗布するように指示すると回答した皮膚科医は49.9%と最も多い結果となりました。ステロイド外用剤と保湿剤の併用の場合、ステロイド外用剤の効果を重要視しているために、このような回答になったと考えられます。
(引用:皮膚外用剤の塗り方 -塗布順序- マルホ)
② 保湿剤 → ステロイド外用剤の順 (ステロイドを広範囲に塗りたくないとき)
ステロイドを先に塗ってから保湿剤で塗り広げると、ステロイド外用剤を塗る必要がない部分にまでステロイドが作用してしまいます。
炎症部分が小さいときなど、ステロイドを広範囲に使用しなくてもよい場合は、保湿剤を塗ってからステロイド外用剤を乗せるように塗ると良いですね。
● 結局、どっちがいいの?

塗る順番に関して、どちらが良いかという結論は出ていません。
ラットを使った実験では、塗る順番によって効果や副作用に違いがないという報告もありますが、人ではまだわかっていないんです。
塗布順序と効果の関係
ラットを用いて、ステロイド外用剤とヘパリン類似物質製剤の塗布順序と全身性副作用への影響を調べた 結果2)、体重減少、胸腺・副腎重量の減少は塗布順序に関係がありませんでした。塗布順序を変えても、皮膚の上で混ざってしまうことが一因であると考えられます。
ステロイド外用剤は、一般に効果が強いほど副作用が強いと考えられています。そのため、全身性副作用が塗布順序に影響されなかったことから、効果も影響されないと予想されます。(引用:皮膚外用剤の塗り方 -塗布順序- マルホ)
塗る順番に迷ったり、心配な場合は、処方元の医師に確認してみましょう。
4.まとめ

ステロイド外用剤って、正しく使えば安全な薬だったんですね!
もちろん、使い方を間違えれば副作用のリスクがあります。しかし、ちまたでよく聞く怖い副作用が『実はウソだった』という事実にびっくりした方もいるのではないでしょうか。
アトピーや乳児湿疹に対して、ステロイド外用剤が使われることがありますが、もし、ステロイド外用剤が処方されたら、たっぷり、しっかり、皮膚がきれいな状態になるまで使い続けることが重要です。
ステロイド外用剤を正しく使うことができれば、アトピーや湿疹による皮膚のかゆみや赤みは早く良くなります。そして、皮膚の状態が良くなれば、自然とステロイド外用剤は必要なくなります。
ステロイド、ステロイドと、あまり目くじらを立てず、落ち着いてステロイド外用剤を使った治療に向き合う必要があるのかもしれませんね。
追記:それでもステロイド外用剤を使いたくない人へ

最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございました。
ここまで読み進めても、「やっぱり子供にはステロイド外用剤を使いたくない」という方もいるのではないでしょうか。ただそれは、お子さんの健康を真剣に考えているからこそ、ステロイド外用剤の副作用に慎重になってしまうんだと思います。
しかし、ステロイド外用剤をこばむ親や、かゆくて皮膚を掻きむしっているお子さんを見ていると、「ステロイド外用剤をしっかり使ってくれたら、かゆみや赤みがとれて楽になれるはずなのに・・・」と残念な気持ちになるのも事実です。もちろん、十分に説明し、納得していただけなかった僕ら医療者に責任があるんですが。
そんなときは、無理にステロイド外用剤を使う必要はないと思います。
でも、保湿剤を使っていても良くならず、かゆそうにしているお子さんを大人になるまで、ずっとかゆいまま生活させますか? 答えは「ノー」ですよね。
少しでも「ステロイド外用剤を使ったほうが良いかも」と思えたその時に、遠慮せずに主治医やスタッフに質問・疑問をぶつけてみて下さい。納得してステロイド外用剤を使い始めることで、お子さんの皮膚状態はみるみる良くなるはずです。
半年くらい前にスネの部分に湿疹ができ始め、さほど痒みはないのですが、次々に広がり腿の方まで広がってきたので皮膚科に行きました。「尋常性乾癬」と言われ、ステロイドの塗り薬を投与していただき、根気よく塗り続けましたが,少しよくなったかなと思ってもしばらくするとまた同じ箇所が赤くなったり、次第にお腹やお尻の方まで。薬剤師の友人に「ステロイドはあまり長く続けない方が良い」と言われて、迷っています。この記事を読んで、やはり続けた方がいいのかなとも思いましたが、どうしたらよろしいでしょうか。
山口紹子様
コメントありがとうございます。「尋常性乾癬」の治療をされているのですね。「早く良くなってほしいのに上手くいかない!」という歯がゆさ、お察し致します。
回答に入る前に、まず誤解のないように申し上げておきますと、本記事では「アトピー性皮膚炎」の患者さん(またはその親御さん)向けに執筆しています。「アトピー性皮膚炎」と「尋常性乾癬」は違う病気とされており、私はあくまで薬剤師なので詳細な病気の解説は控えさせていただきますが、ざっくり言うと、アトピー性皮膚炎は「アレルゲンの侵入(ダニ・ほこり・食べ物など)によるアレルギー反応による皮膚の炎症」、尋常性乾癬は「体の免疫細胞の異常によって皮膚が刺激を受けたときに炎症が起きる+皮膚が分厚くなる病気」です。
そのため、アトピー性皮膚炎はステロイド軟膏を正しく塗っていくことで数週間で改善していくことが多い病気なのですが、尋常性乾癬はコントロールが上手くいかないとステロイド軟膏を使っても何度もぶり返してしまうことが多い病気だという違いがあります。
前置きが長くなりましたが、尋常性乾癬でステロイド治療をされているのであれば、いきなり自己中断するのは良くないと思います。なぜなら、『ステロイド治療によってある程度は病気のぶり返しを和らげている』からです。
また、ステロイド軟膏は塗り方も大切で、たっぷり皮膚の炎症部分に厚めに塗ることも大切です。
ただ、ずっと続けているだけでは副作用が考えられるので、次の治療方法を主治医と一緒に考える必要もあります。
簡単に尋常性乾癬の治療方法を紹介しますと、①皮膚の炎症を抑える外用剤(ステロイド外用剤)、②免疫細胞の働きを抑える薬(内服または注射薬)、③紫外線療法、④皮膚が分厚くなる(角化症)のを抑える薬、などの選択肢があります(もちろん、全ての治療方法にメリット・デメリットがあります)。
つまり、尋常性乾癬の最初の治療としてステロイド軟膏の治療が始まっていますが、まだ治療の初期段階とも考えることもできます。
病気のコントロールの程度を見ながら医師は治療方法を考えると思いますので、一度かかりつけの主治医としっかり相談(今の悩みも)されることをおすすめします。
長くなりましたが、病気がうまくコントロールできて皮膚病に悩まない生活をおくれるよう願っています。