
こんにちは、薬剤師のあきゆいです。
キレイになりたい人が使っている美容食品『プラセンタ』。最近はドラッグストアや通販でもよく見かけるようになってきましたね。
ところで『プラセンタ』の日本語訳って、『胎盤』だってご存知ですか?
今となっては一般常識なのかもしれませんが、同僚から初めてその話を聞いた当時はすこぶる驚きました。(『胎盤を飲む』と聞くと、さながらおとぎ話の魔女のようなイメージが湧くのは僕だけではないはず 笑)
様々な健康食品に取り入れられている『プラセンタ』で気になるのは、『副作用』や『危険性』ですよね。胎盤という動物由来の成分を使っているし、不安になるのもうなずけます。
そんなプラセンタの『副作用』や『危険性』は実際のところどうなのか、薬剤師がわかりやすく説明します。
1.プラセンタとは?
1-1.プラセンタ(=胎盤)は万能薬として愛飲されてきた

『プラセンタ』とは胎盤のことです。
胎盤(プラセンタ)は、お腹の中の赤ちゃんとお母さんを繋ぐ大切な臓器です。様々な栄養成分や成長因子の供給、排泄物などの処理を行い、赤ちゃんがすくすく育つ環境を保つ働きがあります。
そんな赤ちゃんにとって大切なプラセンタは、万能薬として大昔から珍重されてきました。
なんと! 紀元前~古代ギリシャ時代には、すでにプラセンタが登場します。秦の始皇帝(大昔の中国の皇帝)は不老不死の妙薬として愛飲していました。楊貴妃やクレオパトラ、マリー・アントワネットなど、世界の名だたる美女たちも愛飲していたそうです。
大昔から、老化や美容にこだわる人々に使われてきたのが『プラセンタ』なんですね。
1-2.プラセンタを食べるのは理にかなっている?

『胎盤を食べるのは、自然界ではごく普通のこと』だって知っていますか?
自然界では、ほとんどの動物が、分娩後に出てきた胎盤を母親自身が食べてしまうそうです。本能的に、栄養価の高い胎盤を食べることが産後の体力低下に効果的だということがわかっているのでしょう。
2.プラセンタの副作用は?
2-1.プラセンタに重大な副作用報告は無い

プラセンタには重大な副作用報告はありません。
プラセンタ注射剤のラエンネックの副作用を見てみると・・・
薬効再評価時に実施した臨床試験における安全性評価対象例273例中、副作用もしくは副作用が疑われた症例は計10例(3.7%)であった。この内、注射部位の疼痛を訴えた患者が7例(2.6%)と最も高く、過敏症(発疹・発熱・掻痒感など)、注射部位の硬結、女性型乳房、各1例(0.4%)であった。但し、女性型乳房については本剤との因果関係は不明であった。また、臨床検査値に異常変動の認められた症例はなかった。(引用:ラエンネック添付文書)
副作用は全体の3.7%、ほとんどが「注射」をすることによって起きた副作用ですね。ましてや、プラセンタサプリメントは「飲むもの」ですから、副作用は更に減ることが予想されます。
プラセンタ自体が全身に引き起こした副作用は、ほとんど無いと言えますね。
2-2.プラセンタは太る?
「プラセンタは太る」と聞いたことがあるかもしれませんが、実際にはどうなんでしょう?
プラセンタエキスを含むドリンクの肝機能改善効果を調査した研究結果では、肝機能の改善とともに、体脂肪率の増加が見られたようです。

(出典:『プラセンタエキス含有ドリンクの疲労および肝機能改善効果』新薬と臨床 J.New Rem.&Clin. Vol.60 No.9)
確かに、プラセンタドリンクの摂取前より、摂取4~8週後に体脂肪率が増加していますね。ただし、それほど大きな増加ではなく、1%以内の増加です。
この理由として、ドリンク自体が高カロリーであったり、プラセンタによって食欲亢進が起こったのではないかと推測できます。
プラセンタによる食欲亢進の例として、がん患者さんにプラセンタ注射を使用した際の結果をご紹介します。
経過:痙攣をきっかけに脳腫瘍と診断された。X年2月に某大学病院にて手術。その後放射線と抗がん剤の使用をすすめられている。X年3月の初診時はうつ状態、食欲低下、易疲労感が著明であった。
(中略)
初診時よりプラセンタ5A開始。週1回の診察とした。
経時的に全身状態の改善、うつ状態の改善、食欲の充進が見られ、主治医がその状態の改善に驚いているとのこと。暑い昨夏でも旅行に行かれるまでになった。(引用:東洋医学 Vol.32 No1 2016)
プラセンタを使用し始めてから、めちゃくちゃ元気になってますよね。
何も、食欲亢進は悪い反応ではありません。むしろ、適切な栄養を取り込もうと体が活性化している証拠とも考えられます。
また、余計なカロリー摂取を抑えるために、プラセンタサプリメントを選ぶときは、ドリンクではなくてカプセルタイプを選ぶようにしましょう。
おすすめ カプセルタイプのプラセンタサプリメント
2-3.プラセンタによる体調不良は『好転反応』かも

副作用と似て非なるもの、『好転反応』という言葉をご存知ですか?
好転反応は、体調不良などで鈍っていた細胞が、活性化して正常な状態に戻ろうとするときに生じる体の反応です。漢方薬や鍼治療などではよく知られています。
皆さんは「好転反応」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「漢方薬の使いはじめによく出現する症状である。」と知っている方も多いかと思いますが、「好転反応とは、それを摂取することによって、目的とする症状を治そうとする自然治癒力が働く生体反応そのもの!」を意味しています。この反応は、実は治るための第1歩なのです。
アトピー性皮膚炎を治すために漢方薬を服用した結果、皮膚炎や湿疹がこれまで以上にひどく出たり、痒みが増したりするのも好転反応の1つです。漢方薬だけでなく、優れた還元力のある食べものを食べた場合にもこの好転反応が現れることが多々あります。(引用:谷口医院)
好転反応には次のようなものがあげられます。
- 弛緩反応・・・眠い、だるいなどの全身倦怠感
- 過敏反応・・・便秘、下痢、発汗、腫れ、痛み
- 排泄反応・・・湿疹、かゆみ、目やに、吹き出物
- 回復反応・・・めまい、動機、胃痛、腹痛、吐き気、発熱
細胞が正常化したときに『好転反応』は終わるので、薬の副作用とは全く異なります。
プラセンタでも、めまいが起きるなどの症状を訴える方もいるようですが、好転反応であるケースが多くあると考えられます。
3.プラセンタは危険なのか?
3-1.プラセンタによる『病原菌の感染リスク』はあるの?
プラセンタは生体から抽出した成分なので、一番気になるのが感染症ですよね。
例えば、プラセンタ注射であれば、国の相当厳格な基準をクリアした原料・製法で作られているので、感染症のリスクは無いと考えて良いという見解があります。
プラセンタ注射薬は、蛋白を含まないか、水溶性の低分子蛋白のみを含む工程で製造されるため、スクリーニングと合わせて現実的に安全であると考えられる。(引用:日本胎盤臨床医学会 研究要覧 No.17, 2015)
プラセンタサプリメントも、それぞれのメーカーが独自にプラセンタを抽出しているわけではなく、注射などを手がける大手プラセンタ原料メーカーから原材料となるプラセンタを仕入れているのが普通です。
従って、しっかりとした原料メーカーによる製法であれば、品質面では問題ないと考えて良いでしょう。
事実、今まで多くの有名人が使用してきて、感染などのニュースが1つも無いことがその証拠です。
3-2.豚や馬のプラセンタは本当に安全?
なぜ、豚や馬の胎盤がプラセンタサプリメントとして適しているんでしょうか?
それは、『豚や馬は病気に強く、危険な感染症リスクもない』からです。
豚や馬と同じく、私達の身近な動物である牛や羊は、BSEやスクレイピーといったプリオン病(異常なタンパク質による病気)が知られています。BSEなどは人に感染すると死に至る恐ろしい病気です。
豚や馬では、BSEような人への感染症は知られていません。
また、プラセンタを大量生産するには、たくさん出産回数のある動物のほうが有利です。しかし、馬を使用している理由は、安全性が高いからです。
馬は1年に1頭しか出産しないので生産効率は悪いのですが、体温が高くて病原菌に強く、質の良いプラセンタを産生するので、安全性や良質なプラセンタを求める人に馬プラセンタが選ばれているんです。
しかし、馬であれば必ずしも良いという訳ではありません、大事なのはプラセンタの製法です。しっかりした製法で作られた豚プラセンタが馬より優れている場合もあります。
Pick UP ! 安全性で選ぶ!豚・馬プラセンタサプリメント
3-2.プラセンタを飲むと献血ができない?
プラセンタを使っていると献血出来ないと言う話を聞いたことがありませんか?
でも、それはヒトの胎盤を使っている注射剤の話。実際には感染症のリスクがほぼ無くても、体に直接注射する薬だからこそ、規制がかかっているんです。
サプリメントの場合は、感染リスクを極限まで抑えた豚や馬の胎盤を使っているので、きちんと消化、吸収して体内に取り込まれて血液に影響もなく、献血出来なくなることもありません。
4.プラセンタは効果なし?
4-1.『成長因子(グロースファクター)が含まれる』は本当か?

赤ちゃんがお腹にいる期間は、約10ヶ月間。
その限られた期間で、1個の受精卵を1人の人間にまで育て上げるために、胎盤(プラセンタ)は様々な成長因子(グロースファクター)を大量に作り出し、赤ちゃんに与え続けています。
そんな、成長因子(グロースファクター)には、
- 上皮細胞増殖因子(EGF:表皮細胞の合成を促進する因子)
- 線維芽細胞増殖因子(FGF:真皮を構成するコラーゲン・ヒアルロン酸などを産生する線維芽細胞の増殖を促進する因子)
- 肝細胞増殖因子(HFG)
- 神経細胞増殖因子(NGF)
- インシュリン様成長因子(IGF)
などがあります。
最近は、多くのプラセンタサプリメントで「成長因子(グロースファクター)がたっぷり!」という謳い文句が書かれていますよね。
しかし残念ながら、多くのプラセンタサプリメントには、成長因子が『ほとんど含まれていない』と最新の研究では考えられています。(プラセンタを紹介している多くのサイトでも、全てのプラセンタに成長因子が入っている・・・と誤解されそうな書き方をしています)
これは、プラセンタ製剤の製法をみると明らかです。
通常のプラセンタ製造工程においては、安全対策として、
- 101℃以上で1時間以上の加水分解
- 121℃で1時間、121℃で30分の高圧蒸気滅菌
をおこなっています。
このレベルで処理をされると、ホルモン、蛋白、ウイルス、細菌は分解されて働かなくなります。つまり、ホルモンの一種である成長因子も分解・失活されてしまうんですね。
最近はプラセンタのサプリメントが非常に多くなり,それぞれ「サイトカイン入り」とか「HGFが入っている」といった嘘のセールストークが飛び交ったりしていますが,それは正しくありません。サイトカインは加熱滅菌すれば壊れてしまうものですから,それが入っているわけがないのです。プラセンタ注射にも同じく,加熱滅菌や加水分解をしているので理論的には入っていない,と考えるべきです。(引用:東洋医学 Vol.32 No1 2016)
しかし、「成長因子がほとんど含まれていないから、効果がない」と考えるのは、ちょっと違うんです。次は、その理由を解説します。
4-3.プラセンタを摂ることで、『カラダ本来の』成長因子が活性化する
なぜ、プラセンタ注射やサプリメントは成長因子がほとんど含まれていないにもかかわらず、体に良いと言われているのでしょうか?
実は、プラセンタを摂ると、『自分のカラダ本来の成長因子』が活性化するのではないかと考えられています。
プラセンタ注射をすると,臨床的には体内でまるで成長因子が働いているかのような効き方をするのです。このあたりの複雑な作用機序はまだ解明されていませんが,「lnducerではないか?」とも考えられています。つまりプラセンタ注射をすると,体内の成長因子が活性化するのではないかとも考えられているわけです(引用:東洋医学 Vol.32 No1 2016)
*Inducer(インデューサー):酵素・ホルモンなどを体から引き出す働きをする物質のこと
では、プラセンタの全てのメーカーが「成長因子が含まれている」と嘘を言っているかというと、実はそうではありません。
様々な製法のうち、高品質な製品だけに使われる『酵素分解法』であれば、低温処理後、酵素を利用し特定の物質のみ分解するので、有効成分を壊さず抽出できるようです。
また、加熱・分解処理を極力抑えた、『分子分画法』という製法が誕生しています。医薬品のプラセンタ注射『ラエンネック』を製造している日本生物製剤が採用している製法で、『ラエンネック製法』とも言われています。
欠点は、細胞増殖因子やサイトカインの様な大きく複雑で且つデリケートな分子は、粉々に壊れてしまう事。ですから、これらの貴重な成分を損なわずに、それも高濃度で抽出する場合は、目の細かい篩を使った分子分画処理を併用しなければなりません。ラエンネックは、ペプシンによる酵素分解、塩酸加水分解処理を行なっていますが、分子分画処理を併用しているので、細胞増殖因子やサイトカイン等の効果も期待出来る注射薬です。(引用:旭川皮フ科整形外科クリニック)
さらに、技術やコストがかかりますが、より多くの高純度なプラセンタエキスを取り出す製法として、『酵素分解法』に凍結処理を組み合わせた『凍結酵素抽出法』が使用され始めているようです。
胎盤をマイナス25度で凍結させたのち、目的に合わせて働く4種類の酵素を加えて抽出。ペプタイドが活性化し、成分が壊れにくくなるだけでなく、安定性も高まり、プラセンタ独特のニオイが改善されます。従来のプラセンタには含まれていないシアル酸、SA(スーパーアクティブ)アミノ酸といった成分も含まれており、高濃度なエキスとなります。(引用:バイオアンチエイジング株式会社)
「酵素分解法」、「ラエンネック製法(分子分画法)」、「凍結酵素抽出法」などを採用しているプラセンタサプリメントを選ぶというのも良い選び方です。
おすすめ 製法で選ぶ!プラセンタサプリメント
4-3.プラセンタを飲むことで『肌質が改善する』という研究結果がある

「プラセンタの効果は、実際のところどうなのか?」、気になりますよね。
最近は、プラセンタを飲むことで『肌質が改善する』という研究結果が多数報告されています。それらの一部をご紹介します。
『プラセンタエキスによる肌のエイジングケア』*の研究報告
*医学と薬学 第73巻 第11号 2016年 11月
被験者にプラセンタエキスを8週間服用してもらった後、肌のエイジングケアに対するアンケートを行った研究です。
プラセンタサプリメント摂取前と、摂取4~8週間後のアンケート結果を点数化して比較すると、肌状態に改善が認められたという結果が出ています。(点数が低いほど良い結果)

(出典:プラセンタエキスによる肌のエイジングケア 医学と薬学 第73巻 第11号 2016年 11月)
グラフを見るとわかるように、毛穴の目立ち、毛穴の黒ずみ、肌の乾燥、顔が脂っぽい、メイクののりが悪い、目尻のしわ、くすみ、口元のたるみ、顔色が悪い、敏感肌に関する点数が低下(=症状が改善している)しています。
このように、客観的なデータとしてもプラセンタの有効性が認識されてきているんですね。
4-4.プラセンタの美容効果の源は、豊富な『アミノ酸』
プラセンタの美容効果の源は、豊富な『アミノ酸』です。
プラセンタに含まれるアミノ酸は、ロイシン、リジン、バリン、スレオニン、イソロイシン、グリシン、アラニン、アルギニンなどたくさんの種類があります。普段の食事に含まれるアミノ酸に比べ、プラセンタに含まれるアミノ酸は単体から構成されているため、体内への吸収率がとても良いのです。
それが、プラセンタの美容効果がアミノ酸にあると言える理由です。
もし、どうしてもプラセンタに抵抗がある人は、『アミノ酸』が豊富に含まれたサプリメントを代わりに試してみるのも良いかもしれませんね。
3.まとめ
プラセンタの副作用・危険性について最新の研究も織り交ぜてご紹介しました。長くなったので、もう一度ポイントをまとめておきますね。
- プラセンタサプリメントに重大な副作用・感染症リスクは無い
- 豚・馬プラセンタは、しっかりした製法であれば安全
- プラセンタを服用すると、好転反応が出ることがあるが副作用ではない
- 全てのプラセンタに成長因子が含まれる訳ではない
- プラセンタは「ラエンネック製法(分子分画法)」・「凍結酵素抽出法」などの成長因子(グロースファクター)をできるだけ多く抽出できる製法で選ぶ
「プラセンタを試してみたいけど、なかなか踏み出せない」という人の参考になれば嬉しいです。
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