
抗生物質「クラリス」、「クラリシッド」(成分名:クラリスロマイシン)は、幅広い菌に対して作用し、副作用も重篤なものが少ないため、子供にも使いやすい薬です。実際、子供の肺炎治療にも広く使用されています。
しかし、薬との相互作用(飲み合わせ)や、特異な味、下痢などの副作用が問題となることもあります。
そんな、クラリスロマイシンの飲み合わせや、副作用ついて薬剤師が解説します。
- 目次 -
1.クラリス・クラリシッド(成分名:クラリスロマイシン)とは
1-1.クラリスロマイシンってどんな薬?

クラリスやクラリシッドは、「クラリスロマイシン」という成分の抗生物質です。製薬会社によってクラリス、クラリシッドなどの名称でそれぞれ販売されています。
「マクロライド系」という種類の抗生物質で、肺炎、副鼻腔炎、百日咳、ネコひっかき病、ヘリコバクター・ピロリの除菌などに幅広く使用されています。
1-2.薬の形は「粉」または「錠剤」のみ
クラリスロマイシンには、「ドライシロップ(10%散)」、「錠剤(50mg、200mg)」が製品化されています。年齢や体重にあわせて、ドライシロップか錠剤のどちらかが処方されます。
1-3.用法・用量
クラリスロマイシンの飲む量と回数(用法用量)は以下のとおりです。食前でも食後でも問題なく服用できます。
● 肺炎などの一般的な感染症
成人:1日400mg(成分量)を2回に分けて服用
小児:1日 体重1kgあたり10~15mg(成分量)を、2~3回に分けて服用
*ドライシロップは、用時懸濁(水に混ぜて)して服用する
● 副鼻腔炎などへの少量長期投与法
成人:200mg(成分量)を1日1回 服用
小児:体重1kgあたり5mg(成分量)を、1~3回に分けて服用
*添付文書上にはこの用法用量はありませんが、一般的にこれくらいで使用されているようです
2.クラリスロマイシンの副作用について
クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質は、副作用も少なく安全な薬として、子供から大人まで広く使用されています。しかし、いくつか気をつけるべき副作用もありますので、ご紹介します。
2-1.下痢・皮疹

抗生物質は、腸内の細菌叢(善玉菌などの腸内常在菌)を荒らし、下痢を起こしてしまうことがあります。また、クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質は、腸を動かす作用もあるので、下痢などの副作用が比較的起きやすい薬です。
下痢は1日1~2回程度の軽いものであれば、水分を多めにとって様子見でも良いでしょう。1日3~4回以上なら、病院へ相談してみましょう。
全ての薬に言えることですが、薬に対する体のアレルギー反応として皮疹(じんま疹)が起きることもあります。薬を服用して皮疹を見つけたら、早めに病院に相談しましょう。
2-2.QT延長症候群
クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質の副作用として、頻度は低いものの、症状が出て放置すると致死的となる可能性があるものに、QT延長症候群があります。
QT延長症候群とは?
突然、脈が乱れて立ち眩みや意識を失う発作が起こる病気です。意識を失う発作が止ま らない場合は死亡することがあります。しかし、発作がない時には自覚症状は全くありま せん。また、検査をしても心電図の QT 時間が長くなる、あるいは中くらいの波(T 波) の形がちがってくること以外は異常が見つかりません。このような心電図の特徴からこの 病気は「QT 延長症候群」と呼ばれています。(引用:鹿児島医療センター)
放っておくと致死的な不整脈ですが、頻度もかなり稀なので過度に怖がることはありません。
抗生物質を処方されている人は、感染症の治療が最優先です。クラリスロマイシンを自己判断でやめてしまわないよう、注意してください。
3.クラリスロマイシンは飲み合わせ(相互作用)に注意!

クラリスロマイシンには、飲み合わせ(相互作用)を起こす薬があるので、注意が必要です。併用禁忌(併用してはいけない)、併用注意(併用する際、慎重にする必要あり)の薬をご紹介します。
3-1.併用禁忌(✕)
併用禁忌の薬とは、併用することで重篤な副作用などが生じる可能性があるので「併用してはいけない薬」のことです。
◆ クラリスロマイシンと<併用禁忌>の薬
- オーラップ(成分名:ピモジド)・・・統合失調症治療薬
- クリアミン、ジヒデルゴット(成分名:エルゴタミン、ジヒデルエルゴタミン)・・・偏頭痛治療薬
- アドシルカ(成分名:タダラフィル)・・・肺性高血圧症治療薬
- スンベプラ(成分名:アスナプレビル)・・・C型肝炎治療薬
- バニヘップ(成分名:バニプレビル)・・・C型肝炎治療薬
- ベルソムラ(成分名:スボレキサント)・・・不眠症治療薬
クラリスロマイシンは、上記の薬の代謝酵素を阻害する作用があるので、併用すると薬の血中濃度が上昇し、薬の効果が強く出てしまう事があります。
これらの薬を服用している人は、クラリスロマイシンを使用することはできません。
3-2.併用注意(△)
併用注意の薬とは、併用することで副作用などが生じる可能性があるので「併用する際、注意が必要な薬」のことです。
クラリスロマイシンとの併用注意とされている薬は多数あるので、代表的な薬を記載します。
◆ クラリスロマイシンと<併用注意>の薬
- リスモダン(成分名:ジソピラミド)・・・不整脈治療薬
- テオドール(成分名:テオフィリン)・・・喘息治療薬
- ネオーラル、サンディミュン(成分名:シクロスポリン)・・・免疫抑制剤
- ワーファリン(成分名:ワルファリン)・・・抗凝固薬
- テグレトール(成分名:カルバマゼピン)・・・てんかん治療薬
- ジゴシン(成分名:ジゴキシン)・・・心不全治療薬
- リファジン(成分名:リファンピシン)・・・抗菌薬
- ブロチゾラムなど(ベンゾジアゼピン系薬)・・・不眠症治療薬
- アマリールなど(スルホニル尿素剤)・・・血糖降下薬
このように、様々な薬との飲み合わせが問題となるケースがあるので、薬を服用している人は必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
4.クラリスロマイシンの「味」や「飲み方」について

4-1.クラリスロマイシンには苦味がある
クラリスロマイシンは、元々苦い薬です。
そのため、錠剤はフィルムコーティングしていたり、粉薬の場合はドライシロップといって、薬の表面に甘いコーティングをつけることで飲みやすくする工夫がされています。
しかし、すりつぶしたり、噛んだりすると、コーティングが剥がれて苦味が出てきてしまいます。また、ドライシロップの後味には少々苦味が残ってしまいます。
4-2.飲みやすくする方法は?
通常、水で服用すれば強い苦味を感じることは少ないですが、子供は後味の苦さで飲みたがらない場合もあります。しかも、良かれと思って混ぜた飲み物などが、逆に苦味が増す方法だったなんてことも・・・。
クラリスロマイシンの「苦味が増す飲み合わせ」と「おすすめの飲み方」をご紹介します。
● 「やめとけば良かった」・・・苦味が増す飲み合わせ
クラリスロマイシンのドライシロップに付いているコーティングは、酸性の液体と混ざると剥がれてしまい、薬自体の苦味が出てきてしまうため、更に苦味が強くなってしまいます。
酸性の飲み物(例)
- 柑橘系飲料
- 乳酸菌飲料
- ヨーグルト
- スポーツ飲料 など
また、飲み薬にも酸性の物があるのはご存でしょうか?風邪を引いた時に、痰を切る薬としてよく処方される「ムコダイン(成分名:カルボシステイン)」は酸性の薬なので、クラリスロマイシンのドライシロップと混ぜると苦味が強くなります。
これらの飲み物や薬と、クラリスロマイシンのドライシロップを混ぜると更に苦くなるので注意しましょう。
● 「すんなり飲める!」・・・おすすめの飲み方!
クラリスロマイシンなどのマクロライド系は、酸味がなく・乳脂肪分の多い食品と相性が良いようです。
おすすめの食品(例)
- バニラ・チョコアイス
- ココア
- 練乳
- 牛乳
- 服薬補助ゼリー(チョコレート系) など
舌に薬が触れないように、薬を包み込むようにして飲ませてみると良いでしょう。
味の好みはありますが、「クラリスロマイシンが苦くて飲めない・・・」という場合には、ぜひ試してみてください。
5.まとめ
クラリス、クラリシッドなどの「クラリスロマイシン」は、大人から子供まで広く処方されている薬です。苦味があって困っているなら、この記事でご紹介した方法をぜひ試してみてください。
また、注意しなければいけない薬の飲み合わせがあったり、下痢などの副作用で困ってしまうこともありますが、自己判断で抗生物質を途中で止めてしまうと、十分な治療効果が無いばかりか、薬に抵抗力のある耐性菌が生まれてしまうこともあります。
クラリスロマイシンに限らず、抗生物質は処方された日数分をしっかり飲みきることが大切ですね。
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